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ヤーチャイカ  2008/7/6

〈覚和歌子・谷川俊太郎監督、日本、2008〉

全篇、動きのないスチール写真だけで構成されていて、役者の台詞も一切なし。あるのはナレーションだけ…という、ちょっと変わった「映画」だと聞いていた。

もしかして、お行儀のよい紙芝居みたいだったらどうしよう…と、意地悪い期待もしていた。 けれど、適度な間隔で切り替えられるカット――例えば人物の表情の微妙な変化を、静止画像で追い続ける、というのは、予想以上に面白い体験だった。

監督でもある覚和歌子さんによる、シンプルなナレーションもそうだった。語り過ぎないこと。敢えて、余白と飛躍を生かして選ばれた言葉が、想像力をかきたててくれる。

例えば、主人公の一人である男――仕事も何もかも放り出して死ぬために、天文台のある村にやってきた彼の身の上に、いったい何が起こったのか、とか。恋人を亡くして、一人でこの村にやってきた女の身体にあるケロイドは、なぜできたのか、とか。それらについて、はっきりした説明はないけれど、具体的な細部は、観客は必要としていない。

それにしても、星空と向き合うとは、地上に生きる誰にも許されているのに、なんて贅沢な営みなのだろう。主人公の女性は、新しい彗星を見つけるという使命を帯びて、夜ごと、天体望遠鏡に向かっている。だけど本当は私にも、帰り道にたった一瞬、夜空を見上げるだけで、永遠を感じることができる。この地上と、宇宙空間との間に、境目はない。 そしてつぶやく。「ここは、とてもいいところ…」

「ヤーチャイカ」とは、「わたしはかもめ」の意味という。世界初の女性宇宙飛行士であるテレシコワが、地上に向かって語りかけたコールサイン。「ヤーチャイカ、こちらはかもめ」。

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