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生とデザイン――かたちの詩学Ⅰ  2009/4/11 

〈向井周太郎著、中公文庫、2008年〉

「デザイン」というカタカナ語から、私が思い浮かべるものとは、何よりもまず、身のまわりにあふれる商品のために、誰かが(デザイナーと言われる人たちが)与えた色やかたち、図案のこと。その商品を売る企業にとって、より多くの利益に結びつくように、より多くの消費者がお金を出して手に入れたいと望むように意図されたもの。

こういうイメージが一般的なのかどうかは、よく分からない。けれど“design”という単語をカタカナ語でしか移し変えることができなかったように、おそらく日本人にとっては、著者が言うような「デザイン」の概念――形を通して文化を形成してゆく行為――を受け入れる下地は、今でも薄いのではないかと思う。「かくあれ」と理想を思い描く強い力で、可もなく不可もない現実を変えてゆく精神の力。

デザインとは「あるべき生活世界の形成である」と著者はいう。

――デザインという行為は、基本的に、人間の生命や生存の基盤と安全、日々の生活やくらし方、生き方や生きる方法、生きていくうえでの人々の関係やコミュニケーションや社会形成などにおよぶ、人の誕生から死までの生のプロセス全体と、生命の源泉としての自然環境や、生命あるものとの共生関係などを包容する「あるべき生活世界の形成」に深くかかわるものだ。(p269)

本書には、バウバウスをはじめてして、モダン・デザインを生み出したヨーロッパの文化的背景も紹介されている。何よりもまず、かの地の芸術家たちの、生命のあるべき姿を求める思索の力の強さに驚くとともに、そこに日本文化とはまったく「異質な」ありようを感じる。日本人にとって、こういう「デザイン」の概念とは、まず輸入し、少し頭でっかちに、手探りで実践してきたものではなかっただろうか。一方で、本書の内容ではないけれど、民芸運動をはじめ日本独自に「モノと生活との関係」について考えてきた歴史についても、読んでみたい気がする。

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